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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)37号 判決

奈良県天理市石上町上出七六五-四

控訴人

尾村裕司

右訴訟代理人弁護士

吉田恒俊

佐藤真理

相良博美

奈良市登大路町

奈良合同庁舎

被控訴人

上田富雄

平名正也

井上二郎

上田雄彦

後藤洋次郎

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二1  被控訴人が控訴人の昭和四六年分、昭和四七年分及び昭和四八年分の所得税につき、昭和五〇年三月一日付でなした昭和四六年分総所得額を金二一七万六五四一円(異議決定により金一九二万一四〇二円、審査請求裁決により金一五四万二六〇〇円)、昭和四七年分総所得額を金一三七万八五六五円(異議決定により金一二七万八三八四円)及び昭和四八年分総所得金額を金六四六万四三二〇円(異議決定により金六一六万九一五五円、審査請求裁決により金二〇五万一二七三円)とした更正処分のうち、昭和四六年分につき金一二八万八九〇九円、昭和四七年分につき金八六万三五四七円、昭和四八年分につき金一五七万四七〇一円をそれぞれ超える部分及びこれらに対応する加算税の各賦課処分をいずれも取消す。

2  控訴人のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は第一・二審を通じこれを三分し、その二を被控訴人の、その余を控訴人の各負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「1 原判決を取消す。 2 被控訴人が控訴人の昭和四六年分、昭和四七年分及び昭和四八年分の所得税につき、昭和五〇年三月一日でなした昭和四六年分総所得額を二一七万六五四一円(異議決定により一九二万一四〇二円、審査請求裁決により一五四万二六〇〇円)、昭和四七年総所得額を一三七万八五六五円(異議決定により一二七万八三八四円)及び昭和四八年分総所得額を六四六万四三二〇円(異議決定により六一六万九一五五円、審査請求裁決により二〇五万一二七三円)とした更正処分のうち、昭和四六年分につき一一四万五一三六円、昭和四七年分につき七三万一二八三円、昭和四八年分につき九六万八〇九八円をそれぞれ超える部分及び加算税の賦課処分をいずれも取消す。 3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

二  当事者双方の主張関係は、次に訂正・付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目四行目の「原告は、」の次に「トムソン加工業(紙箱加工業)を営む者であるが、」を、同行の「同四八年分」の次に「(以下「本件各係争年分」という。)」を、一〇、一一行目の「更正処分」の次に「(以下「本件各更正処分」という。)」をそれぞれ挿入する。

2  同三枚目表七行目の「加算税」の次に「・(三)の異議決定、(四)の審査請求裁決についても同じ」を挿入する。

3  同四枚目表初行の「更正手続」を「手続上」と、二行目の「本件更正手続」を「本件各更正処分の手続」と、五行目の「行つた。しかるに」を「行つてきたが」とそれぞれ改め、六行目の「さかのぼつて」の次に「青色申告の承認を」、裏二行目の「民主商工会」の次に「(以下「民商」という。)」をそれぞれ挿入し、六行目の「某らが」を「らが担当官として」と、七行目の「彼ら」を「右担当官ら」と、一〇行目の「大西」を「大西担当官」とそれぞれ改める。

4  同五枚目表二行目の「(篠原または大西)の依頼に基き」を「の差し金により」と、四行目の「脱会届を出す」を「を脱会するように強要し、脱会しなければ数百万円の更正処分を受けることになる」とそれぞれ改め、九行目の「更正処分の全額自体からみた違法、不当性」を削除し、一〇行目の「原告に対する更正処分」及び裏四行目の「当初の更正処分」と改め、七行目の「本件」の次に「各」を挿入する。

5  同六枚目表三行目の「本件」の次に「各」を挿入する。

6  同六枚目表四行目から八枚目裏初行までを次のとおり改める。

「2 実体上の違法不当性」

控訴人の本件各係争年分の所得はいずれも控訴人の前記各申告額を超えるものではないから、本件各更正処分のうち右各申告額を超える分は違法として取消されるべきである。」

7  同八枚目裏二行目の「要するに」を「従つて」と改め、二、三行目の「あり、原告の申告額が全く正しいもので」を削除し、末行の「本件」の次に「各」を挿入する。

8  同九枚目表初行の「本件」の次に「各」を挿入する。

9  同一〇枚目表六行目の「原告は」から七行目の「あるが、」までを「控訴人の」と、七行目の「別表8」を「別表1の被控訴人主張額欄記載」と、一〇行目の「そのうち」から末行までを「なお、昭和四八年分収入金額の内訳は別表2のとおりである。」とそれぞれ改める。

10  同一〇枚目裏初行から一四枚目裏八行目までを次のとおり改める。

「六 被控訴人の主張に対する控訴人の答弁

本件各係争年分の控訴人の所得額は別表1控訴人主張欄記載のとおりである。従つて同表備考欄○印記載の項目の金額を争い、その余の項目の金額はすべて認める。」

11  同一九行目から二八枚目まで(別表)を本判決別表1、2、3に改める。

(控訴人の主張)

一  昭和四八年分について

1  収入金額 一〇八二万〇四四二円

被控訴人主張の別表2のうち9の有限会社沢井紙器工業所(以下「沢井紙器」という。)分は五〇〇〇円過大であり、実際の収入は六九万〇四七五円である。

また、同表のうち、21、22の小切手入金分各一万円分は両替え等によるもので収入によるものではない。従つて控訴人の収入は被控訴人の主張よりも二万五〇〇〇円少ない一〇八二万〇四四二円である。

2  経費

経費のうち争いのある項目の内訳は次のとおりである。

(一)  修繕費 三五万九〇〇〇円

(1) 桜井鉄工株式会社への支払 二万二五〇〇円

(2) 株式会社東川工務店への支払 一二万二〇〇〇円

(3) 中西電気商会への支払 二万九〇〇〇円

(4) 尾浦自動車株式会社、奈良スズキ販売株式会社への支払(自動車の修理、点検員) 四万五五〇〇円

(5) 久保西辰次への支払(工場修理費) 一一万〇〇〇〇円

控訴人の工場は住宅兼用建物であるところ、工場部分と住宅部分の両方を修理したので、その費用の半額を計上した。

(6) 合名会社丸八製材所への支払(材木代) 六〇〇〇円

(7) 結束機修理費 五〇〇〇円

(8) 作業台修理費 六〇〇〇円

(9) 澤田 金への支払(工場屋根修理費) 一万一〇〇〇円

(10) リンナイ株式会社への支払(ガスコンロ修理費) 一〇〇〇円

(二)  消耗品費 一二〇万二〇八六円

(1) 株式会社塚谷(以下「塚谷」という。)への支払 二四万八三九六円

(2) 株式会社ミマスへの支払 九万〇二四〇円

(3) 信岡紙器工業所への支払 一万八〇〇〇円

(4) タオル、ガムテープ、石けん等雑品の購入費 八四万五四五〇円

(三)  給料賃金 四八一万八一四五円

被控訴人主張の藤川忠昭外四名に支払つた給料計二六万八一四五円以外に、控訴人は同年中アルバイトを雇いその賃金五五万円を支払つた。

二  昭和四七年分について

経費

経費のうち争いのある項目の内訳は次のとおりである。

(一)  接待交際費 一九万二〇〇〇円

(1)  トムソン組合関係費用(組合費、新年会費、忘年会費、旅行会費) 四万七〇〇〇円

(2)  奈良県紙器工業組合関係費用(懇親会費) 二万円

(3)  得意先等の接待費用 六万円

(4)  中元と歳暮 五万円

(5)  慶弔費 一万五〇〇〇円

(二)  消耗品費 八九万三六五七円

(1)  塚谷への支払 六三万七一六一円

(2)  株式会社ミマスへの支払 五万六四九六円

(3)  その他の雑品購入費 二〇万円

(三)  福利厚生費 三一万六三一五円

(1)  岡山方面慰安旅行費 一一万六三一五円

(2)  間食費 一五万六〇〇〇円

(3)  慰労会費(年二回) 四万円

(4)  薬(常備薬)代 四〇〇〇円

三  昭和四六年分について

経費

経費

経費のうち争いのある項目につき、次のとおり主張する。

昭和四六年分について、控訴人は被控訴人と話し合いの結果修正申告をして受理され、資料を保存する必要がなくなつたと考え廃棄したので、実額を証することができず、推計せざるを得ない。

(一)  接待交際費 一二万円

接待交際費として少くとも一二万円が必要であつた。この金額は昭和四七年分、昭和四八年分の各接待交際費の額と対比しても妥当なものである。

(二)  消耗品費 七九万一一二九円

昭和四七年分、昭和四八年分の各消耗費の収入金額に対する割合の平均値をもつて、昭和四六年分の消耗品費を推計すると、その額は七九万一一二九円となる。

(算式)

収入 消耗品費 消耗品費の収入金額に対する割合

昭和47年分 6,790,052円 893,657円 0.1316126

昭和48年分 10,820,442円 1,202,086円 0.1110939

上記2年分の消耗品費の収入金額に対する割合の平均 0.1213532

昭和46年分の消耗品費=6,519,224円(収入)×0.1213532=791,129円

(被控訴人の主張)

一  控訴人の右主張はすべて争う。

二  控訴人が争いがあるとして主張する経費中の各項目の金額はいずれも控訴人の主張額と異なり、被控訴人の認容額を下回るものである。

1  控訴人は、当審においてその主張を立証するために多数の証拠を提出したが、右各証拠は取引から一〇年も経過した領収書類や控訴人の記憶に基づくメモ等であつてその信びよう性に疑念があるのみならず、控訴人本人の取引とは認められないもの、家事関連費に該当して経費に算入できないもの、取引の具体的内容が明らかでないもの(領収書等の名宛人の記載が不明確なもの、取引時期が不明なもの、領収書のみでこれに対応する請求書、納品書の提出がなく事業に関連する取引かどうか判断できないもの)等が多く含まれている。

2  被控訴人は、本件各係争年分の経費について、控訴人の経理区分にあいまいな点があつても内容が経費であれば変りがないので、控訴人の行つた項目区分(但し実際に確認できたものについては正当な項目に置き替えて)を認容している。

ところで、控訴人の本件各係争年分の経理区分をみると、一定の基準に基いて経理の項目を統一的に区分せず、その区分は極めてあいまいで、一貫性がなく、例えばトムソン機の刃及び梱包用紙(ナイロン)の購入費は売上原価と消耗品費の双方項目に区分している。

従つて経費の項目について、控訴人の主張する経費内訳として主張する分)が漏れているのか、他の項目計上済みであるのか、控訴人提出の証拠では判別できない。

3  控訴人の主張の順序に従つて検討すると、次のとおりである。

(一)  昭和四八年分について

(1) 修繕費

控訴人提出の資料によつても、修繕費と目されるのは、控訴人の主張(1)の桜井鉄工株式会社への支払分(3)の中西電気商会への支払分、(4)の尾浦自動車株式会社、奈良スズキ販売株式会社への支払分のみであり、(5)の久保西辰次への支払分はすべて住宅改修費で事業と関連性はなく、(2)の株式会社東川工務店への支払分、(6)の合名会社丸八製材所への支払分、(9)の澤田鈑金への支払分、(10)のリンナイ株式会社への支払分はいずれも事業との関連性が明らかでなく、(7)の結束機修理費、(8)の作業台修理費はいずれも原始資料は提出されておらず取引事実を確認できない。

(2) 消耗品費

控訴人の主張(1)の塚谷との取引額は二四万〇二九六円であり、うち八万四〇〇〇円(トムソン両刃9×S×3′購入分)は昭和四八年末貯蔵品分として昭和四九年分以降の経費となるべきものである。(3)の信岡紙器工業所からの仕入分はすでに売上原価に計上済みである。(4)の雑品の購入費については原始資料が提出されていないので、取引事実を確認できないし、その中には(1)の塚谷との取引分が含まれている。

なお、昭和四八年分の消耗品費としては控訴人が後記3(二)(2)のとおり塚谷から昭和四七年中に一括大量購入したトムソン刃9×S×3′及びトムソンK9×A×3′(以下トムソン刃9×S×3′等」という。)の昭和四七年末貯蔵品のうち一六万六二四〇円が加

(3) 給料賃金

被控訴人の認容額は藤川忠昭、万年、松下衛、脇田正信、大黒勝則に支給した給料であるが、他に控訴人がアルバイトを雇つた事実はない。

(二)  昭和四七年分について

(1) 接待交際費

控訴人の提出した資料で直接出費の認められるのはせいぜい控訴人の主張(2)の奈良県紙器工業組合関係のうち一万五〇〇〇円(但しうち五〇〇〇円は広告費)のみである。他の出費に関する資料は、すべて作成年の不明なもの、他年分のもの、若しくは控訴人のあやふやな記憶に基づき作成されたメモであつて、信びよう性がない。

(2) 消耗品費

控訴人提出の資料で明らかになるのは、控訴人の主張(1)の塚谷との取引六三万七一六一円、(2)の株式会社ミマスとの取引のうち二万〇五二〇円(3)の雑品購入費のうちの共栄テント商会との取引分一万八二〇〇円であつて、その余の取引については原始資料が提出されていないので事実を確認することができない。

ところで、控訴人と塚谷との取引に関する昭和四六年及び昭和四七年中のトムソン刃9×S×3′等の購入状況は別表3のとおりであるが、昭和四七年七月から同年一〇月にかけてその量が著るしく増大したのは、控訴人がオイルシヨツクによる値上りを予測して、一括大量購入したことによるものである。そして控訴人は昭和四八年中にはトムソン刃9×S×3′等を全く仕入れなかつた。

そうすると、昭和四七年末には控訴人のもとにトムソン刃9×S×3′等が大量に貯蔵品として残存することになり、その残存部分は昭和四八年以降の経費として計上すべきものとなる。

右事実により塚谷からの仕入れ金額六三万七一六一円のうち昭和四七年分の経費に算入されるのは、次の算式に示すとおり一七万七四八一円となる。

(算式)

昭和46年分のトムソン刃9×S×3′等の仕入金額 昭和46年分の収入金額

104,800(円)÷6,519,224(円)=0.0161

昭和47年分の収入金額 昭和47年分の同物品の使用されたものの価格

6,790,052(円)×0.0161=109,320(円)

昭和47年分の同物品の仕入金額 昭和47年末の貯蔵品の価格

569,000(円)-109,320(円)=459,680(円)

昭和48年分の収入金額 昭和48年中に使用されたものの価格(昭和48年分の経費)

10,325,442円×0.0161=166,240(円)

昭和47年分の塚谷からの仕入金額

637,161(円)-459,680(円)=177,481(円)

したがつて、本件において資料によつて認められる消耗品費は、右塚谷との取引による一七万七四八一円と株式会社ミマスとの取引による二万〇五二〇円と共栄テント商会との取引による一万八二〇〇円の合計二一万七二〇一円となる。

ところで、控訴人は売上原価と消耗品費の経理区分を判然としていないので、消耗品費については売上原価を合算したうえ判断しなければならない。そこで、被控訴人の認容した消耗品費二万四〇〇〇円と売上原価五三万六一五一円を合算すると、五六万〇一五一円となり、この金額と資料によつて認められる前記二一万七二〇一円を比較すると、被控訴人の認容額が過少ということができない。

(3) 福利厚生費

控訴人は岡山方面に従業員の慰安旅行をした旨主張するが、従業員の勤務状況や旅行に幼児を伴つて行つたことからすると、家族旅行であつて従業員の慰安旅行とは認め難い。

また、間食費、慰労会費、薬代については、原始資料が提出されていないため事実の確認ができないのみならず、業務との関連性も明らかでない。

したがつて、福利厚生費と目されるものは全く存在しない。

(三) 昭和四六年分について

消耗品費

昭和四六年中の控訴人と塚谷との取引金額が五一万〇七七六円であるところ、この取引金額中には消耗品とはならない糸鋸機二〇万三〇〇〇円及び曲機六万円計二六万三〇〇〇円の購入金額が含まれ、これを除外すると二四万七七七八円となるが、前記3(二)(2)の昭和四七年分の消耗品費と同様、被控訴人の認容した消耗品費八万八二九〇円と売上原価四五万九三六〇円の合算額五四万七六五〇円と右二四万七七七八円とを対比することになるため、被控訴人が主張する消耗品費が過少であるとはいえない。

三  当事者双方の証拠関係は、本件記録中の原審及び当審における証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因(一)ないし(四)の事実は、当事者間に争いがない。

二  控訴人は、本件各更正処分は民商破壊を目的とするものであつて、被控訴人に対する民商脱会工作に失敗したために何らの根拠もなく懲罰的になしたもので、違法に他事考慮をした処分であるから取消されるべきである旨主張するので検討する。

成立に争いのない乙第三五ないし第三七号証、原審証人加藤宣之の証言及び原審における控訴本人の尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると、控訴人は被控訴人から青色申告の承認を受け、本件各係争年分の所得税についても青色申告をしたこと、ところで、被控訴人は昭和四九年一一月二七日頃から控訴人の所得について調査を始めたのであるが、控訴人が同年一二月初め頃民商に入会し、控訴人に対する所得調査について民商事務局員加藤宣之の立会を求めたこと、これに対し被控訴人の調査担当者は、昭和四九年一二月七日頃の控訴人方における初期の調査の際一度加藤宣之と言葉を交したことがあるものの、その次から同人の同席を断り、昭和五〇年一月下旬頃までに数回調査のため控訴人方を訪れたが、その都度立会を拒否したにもかかわらず、加藤宣之が同席したため控訴人方における調査をそれ以上実施しないまま、控訴人の取引金融機関、得意先等を調査したこと、そして被控訴人はその調査結果及び控訴人の提出の青色申告書決算書等の記載により控訴人の申告内容と異なる所得を把握したので、青色申告の承認を取消し、本件各更正処分をしたこと、控訴人に対する調査担当者として当初樋口事務官が控訴人方を訪れたがその後は平林、鈴木、大西各事務官が控訴人方を訪れたこと、なお、控訴人は昭和四九年一二月一四日頃に親類筋に当る国税局職員堀川清蔵から民商を脱会するように強く勧められたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の事実によると、被控訴人提出の申告書に記載された所得額と調査の結果判明した所得額とが異つたので、その調査結果に基づき国税通則法二四条に則り本件各更正処分をしたもので、何らの根拠もなく本件各更正処分をしたということはできない。

本来、税務調査の範囲、程度、方法等は権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねられており、調査に第三者を立会わせるかどうかも調査担当者の裁量に任されているところ、控訴人に対する調査担当者が控訴人方を訪れた都度民商事務局員の立会を拒否したのにもかかわらず同局員が同席したため、それ以上控訴人方における調査を進めないで、控訴人の取引金融機関や得意先等を調査し、被控訴人はその調査結果に基づきそれ以上の調査をするまでもなく更正するのを相当として本件各更正処分をしたものであり、その間に控訴人方に当初来訪した調査担当者が来なくなり他の調査担当者が訪れるようになつたこと、控訴人が親類筋に当る国税局職員から民商を退会するよう強く勧められたこと、その後本件各更正処分と審査請求裁決の結果が著るしく異つたことがあつたものの、本件各更正処分をもつて控訴人が民商を退会しなかつたための懲罰的な他事考慮による違法な処分ということはできない。

よつて、右の点に関する控訴人の主張は理由がない。

三  そこで、本件各更正処分の内容について検討する。

1  昭和四八年分について

控訴人の所得に関する別表1昭和四八年分についての収入金額、売上原価、経費(合計)、差引事業所得金額のうち、売上原価は当事者間に争いがなく、また経費(内訳)のうち修繕費、消耗品費、給料賃金を除き当事者間に争いがない。

(一)  収入金額

控訴人の昭和四八年度収入金額については、別表2のうち9沢井紙器分、21小切手六月二一日入金分を除き当事者間に争いがない。

そこで、右沢井紙器分についてみるに、原審証人金原義憲の証言により真正に成立したものと認められる乙第一一号証の三によると、控訴人は昭和四八年中に沢井紙器から六九万五四七五円の収入のあつたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。もつとも右乙第一一号証の三によれば、沢井紙器から大阪国税局に送付された取引金額等の照会回答書には沢井紙器が控訴人に昭和四八年八月に五万五七〇〇円を支払つた旨の記載があり、一方弁論の全趣旨により成立したものと認められる甲第七号証の二によれば控訴人から沢井紙器に出された昭和四八年七月二五日付請求書には五万〇七〇〇円を請求する旨の記載があり、その間に五〇〇〇円の差があるが、右乙第一一号証の三によれば、沢井紙器が昭和四八年中の控訴人との取引額六九万五四七五円につき同年中に同年八月の五万五七〇〇円を含めて取引額全額の支払を済ませたもので、控訴人が沢井紙器に請求した翌月に沢井紙器から控訴人へ常に請求金額と同額の支払がなされていたものとは認められないので、右甲第七号証の二が存在するからといつて右認定を左右するものではない。

次に、右六月二一日及び七月七日の小切手入金分をみると、前記証人金原義憲の証言により真正に成立したものと認められる乙第四七号証によると、株式会社南都銀行天理支店の控訴人(武田みどり名義)の口座に昭和四八年六月二一日及び同年七月七日に各一万円が小切手により入金されていることが認められるところ、控訴人は右各入金は両替え等によるもので控訴人の収入ではない旨主張するが、この点に関する原審における控訴本人の供述はあいまいであつて容易に信用することができず、他に控訴人の右主張を認めるに足りる証拠がないので、右各一万円の小切手による入金は控訴人の収入と認めるのが相当である。

そうすると、控訴人の昭和四八年分の収入は一〇八四万五四二二円となる。

(二)  修繕費

当審における控訴本人の尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる甲第一七号証の一の一、二、同号証の二、第一八号証の一、二、第一九、第二〇号証、第二一、第二二号証の各一、二、第二三ないし第二五号証、第二六号証の一の一、二、同号証の二、第二七号証の一、二九、第三〇号証によると、控訴人は、昭和四八年中に桜井鉄工株式会社へ二万二五〇〇円、株式会社東川工務店へ一二万二〇〇〇円、中西電気商会へ二万九〇〇〇円、尾浦自動車株式会社、奈良スズキ販売株式会社へ計四万五五〇〇円、久保西辰次へ二二万一七一〇円(但し、控訴人は経費分として一一万円を主張する。)、合名会社丸八製材所へ七〇〇〇円、リンナイ株式会社へ一〇〇〇円、澤田鈑金へ一万一〇〇〇円をそれぞれ支払つたことが認められるところ、当審における控訴本人は右各支出は工場、機械類の修繕のためのものであり、更に結束機修理のために五〇〇〇円、作業台修理のために六〇〇〇円をそれぞれ支出した旨供述するが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五五号証によれば、右のうち久保西辰次に支払つた分はすべて昭和四八年四月になされた住居の修繕の費用に当てられたもので事実と関係のないことが認められ、結束機及び作業台の修理費については裏付ける資料がなく、また、右甲第二五号証によれば、控訴人が昭和四八年四月合名会社丸八製材所から材木を買受けたことが認められるものの、右住宅の改修と同時期であることを考えると、右材木はそのために使用されたことが窮われ、控訴人の右供述は容易に信用することができない。

そうすると、控訴人主張の修繕費総額三五万九〇〇〇円から、久保西辰次への支払分一一万円 (控訴人が経費として主張する分)、結束機修理費五〇〇〇円、作業台修理費六〇〇〇円、合名会社丸八製作所へ支払つた材木代七〇〇〇円合計一二万八〇〇〇円を控除すると、二三万一〇〇〇円となり、被控訴人の認容額二三万三五〇〇円に満たないので、被控訴人の右認容額をもつて修繕費として過少であるということはできない。

(三)  消耗品費

成立に争いのない乙第五六号証(甲第八〇号証の一ないし一三)、当審における控訴本人の尋問の結果とそれにより真正に成立したものと認められる甲第四二号証の一ないし三、第四三号証の一、二、第四四、第四五号証、第四六号証の一、二、第四七、第四八号証によれば、控訴人は昭和四八年中に塚谷からトムソン機の刃等を二四万〇二九六円で、株式会社ミマスからナイロン紐を九万〇二四〇円で、信岡紙器工業所からナイロン紐を一万八〇〇〇円でそれぞれ購入したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、前記乙第五六号証、当審における控訴本人の尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、控訴人が塚谷から昭和四八年一二月二五日に八万四〇〇〇円で一括大量仕入をしたトムソン両刃9×S×3′は同年末において貯蔵品として残存し、また控訴人は昭和四六年及び昭和四七年中に別表3のとおりトムソン刃9×S×3′等を仕入れたのであるが、昭和四七年七月から一〇月にかけてオイルシヨツクによる値上りを予測して一括大量購入をしたため、同年中に五六万九四〇〇円もの右物品を仕入れ、同年末にはかなりの量が貯蔵品として残存し、昭和四八年中には同種物品を全く仕入れていないことが認められるので昭和四八年一二月二五日に仕入れた右物品は貯蔵品として同年分の経費から除外され、また昭和四七年末に貯蔵品として残存したものは昭和四八年分以降の経費として計上されることになる。

そこで、昭和四七年末に貯蔵品として残存する右物品のうち昭和四八年分の経費となるべき部分について検討する。

先ず、昭和四六年分のトムソン刃9×S×3′等の仕入金額に対する割合をもつて昭和四七年中に必要とする右物品の仕入金額を推計すると一〇万九三二〇円となる。

昭和46年中のトムソン刃

9×S×3′の仕入金額 昭和46年分の収入金額

104,800(円)÷6,519,224(円)=0.0161(小数点5位以下4捨5入)

昭和47年分の収入金額

6,790,052円×0.0161=109,320(円)(円未満4捨5入)

従つて、四六万〇〇八〇円分が昭和四七年末の貯蔵品として残存し、このうち一七万四六一二円が昭和四八年分の経費となる。

昭和47年中のトムソン刃

9×S×3′等の仕入金額

569,400(円)-109,320(円)=460,080(円)

昭和48年分の収入金額

10,845,442(円)×0.0161=174,612(円)(円未満4捨5入)

そうすると、昭和四八年中の塚谷からのトムソン刃等の仕入金額二四万〇二九六円から同年中に仕入れた同年末の貯蔵品分八万四〇〇〇円を差引いた一五万六二九六円に、昭和四七年末の貯蔵品分中一七万四六一二円を加えた三三万〇九〇八円が昭和四八年分の経費となる。

控訴人は、右のほかタオル、ガムテープ等の雑品を購入するため八四万五四五〇円を支出した旨主張し、同旨の記載のあるメモ(甲第三一号証の一、二、第七九号証の二)を提出し、当審における控訴本人は右メモは記憶に基づいて記載したもので誤りがない旨の供述をするところ、前記乙第五六号証、右供述及び弁論の全趣旨によれば、控訴人の事業にあたつては多数の消耗品を必要とするものの、右メモの記載中に塚谷との前記取引によつて仕入れたと認められる物品が混入しているほか、控訴人が多数の物品の細部にわたつて記憶していたとは到底認められないので、右メモの記載は容易に信用することができないが、右のような事情を考慮すると、消耗品費について、前記塚谷からの仕入額三三万〇九〇八円、株式会社ミマスからの仕入額九万〇二四〇円及び信岡紙器工業所からの仕入額一万八〇〇〇円の合計四三万九一四八円のほかに、右タオル、ガムテープ等雑品の購入費として、被控訴人が消耗品費として認容した九二万五七七六円を超えない限度の四八万六六二八円と認めるのが相当である。

したがつて、消耗品費は九二万五七七六円ということになる。

なお、被控訴人は信岡紙器工業所からの仕入金額は売上原価に計上済みである旨主張するが、前記甲第四八号証、原審証人木田宏の証言により真正に成立したものと認められる乙第三九号証、当審における控訴本人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第九号証によると、売上原価に計上された信岡紙器工業所との取引額三万八七六〇円は昭和四八年四月一四日に支払われた「見山A白ボール(六一×九七)」三〇〇〇枚の代金であるのに対し、消耗品費に計上された取引額一万八〇〇〇円は同年一二月三〇日に支払われたナイロンテープの代金であることが認められるので、被控訴人の右主張は理由がない。

(四)  給料賃金

控訴人が本件各係争年中藤川忠昭、万年、松下衛、脇田正信、大黒勝則を雇用し、昭和四八年中にその給料として合計四二六万八一四五円を支払つたことは当事者間に争いがない。

そして、前記乙第三九号証、原審及び当審における控訴本人の尋問の結果によると、控訴人は配送関係のアルバイトとして天理教修養科卒業生を適宜一人ないし二人雇い、同年中にその賃金として五五万円を支出したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

なお、控訴人が昭和四八年にアルバイトの雇入れを必要としたことは、控訴人の事業が本件各係争年を通じて業態、雇人の数、雇庸形態が同じであるのに、昭和四八年は他の年よりも収入、支出ともに五、六割増加していることからしても容易に推認できる。

そうすると、昭和四八年分の控訴人の収入は一〇八四万五四四二円、売上原価は一〇〇万二四一〇円、経費(合計)八二六万八三三一円、事業所得金額一五七万四七〇一円となる。

2 昭和四七年分について

控訴人の所得に関する別表1昭和四七年分についての収入金額、売上原価、経費(合計)、差引事業所得金額のうち、収入金額、売上原価は当事者間に争いがなく、また経費(内訳)のうち接待交際費、消耗品費、福利厚生費を除き当事者間に争いがない。

(一)  接待交際費

当審における控訴本人の尋問の結果とこれにより真正に成立したと認められる甲第一五号証、第五〇、第五一号証及び弁論の全趣旨によると、控訴本人は奈良県トムソン紙工組合に加入しており、昭和四八年には一か月二〇〇〇円の組合費を支払い、昭和四七年も同様に組合費を支払つたので年間二万四〇〇〇円を支出し、昭和四七年三月頃奈良県紙器工業組合の関係で三輪紙器会の旅行会に参加してその会費一万円を支払い、また、右組合関係で広告を出してもらうため広告費五〇〇〇円を支出したこと、右支出はいずれも控訴人の事業に関連するものである(なお、右広告費は接待交際費以外の経費項目に計上されていない。)ことが認められ、原審及び当審における控訴本人の尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、得意先に対する接待、中元、歳暮等に一か月平均にして一万円、年間一二万円の支払を要したことが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、控訴人は奈良県トムソン紙工組合の新年会、忘年会、旅行会に参加した旨主張して、昭和四八年中の領収証(甲第一六号証の一ないし三)を提出するが、昭和四八年に右のような会に参加したからといつて昭和四七年にもこれに参加したという証左とはし難く、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

そうすると、接待交際費は一五万九〇〇〇円となる。

(二)  消耗品費

前記乙第五六号証によると、控訴人は塚谷から昭和四七年中に六三万七一六一円のトムソン刃等を仕入れたことが認められるところ、前記三1(三)に認定したとおり、そのうちトムソン刃9×S×3′等四六万〇〇八〇円分が貯蔵品として残存していたのであるから、これを差引いた一七万七〇八一円が昭和四七年分の経費となる。

また、当審における控訴本人の尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる甲第六七、第六八号証の各一ないし三、第六九号証の一、二によると、株式会社ミマスから二万〇五二〇円の物品を仕入れ、共栄テント商会から一万八二〇〇円のシートを仕入れたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

更に控訴人は、右共栄テント商会からの一万八二〇〇円のシートの購入を含め、その他の雑品として二〇万円の仕入れをした旨主張するので検討するに、前記認定の昭和四八年分の消耗品費の額、当審における控訴本人の尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる甲第七八号証並びに弁論の全趣旨を総合すると、控訴人が昭和四七年中に右シートの購入を含め二〇万円以上の消耗品を購入したことを認めることができ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

そうすると、消耗品費は三九万七六〇一円となる。

なお、被控訴人は控訴人が売上原価と消耗品費の経理区分を判然としていないので、消耗品費については被控訴人が認容した売上原価及び消耗品費の合算額をもつて控訴人が支出した消耗品費と対比すべきである旨主張するが、当審における控訴本人の尋問の結果によれば、控訴人は売上原価と消耗品費の経理区分を一応していることが認められ(前記乙第三九号証、成立に争いのない甲第一一号証によれば、昭和四八年分は売上原価と消耗品費が明確に区分されていることが認められる。)このことは昭和四七年及び昭和四八年分の売上原価及び消耗品費を比較してもおのずから明らかであつて、売上原価の存在を全く無視する被控訴人の主張は失当である。

(三)  福利厚生費

前記甲第七八号証、当審における控訴本人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第七〇号ないし第七三号証、第七四号証の一、二、第七五号証、当審における控訴本人の尋問の結果(一部)によると、控訴人は、従業員五名を含む大人六名、幼児一名と共に、昭和四七年五月二一日から同月二三日まで従業員の慰安のため岡山方面に旅行をし、その費用として一一万六三一五円を要したことが認められるところ、従業員の旅行のために必要な費用としては、右一一万六三一五円から幼児のために支出したとみられる幼児料金、オムライス、ジユース、フアンタの代金合計一六〇〇円(前記甲第七二号証、第七四号証の二、第七五号証によれば、その出費のあることが認められる。)を差引いた一一万四七一五円の七分の六に当る九万八三二七円とみるのが相当である。

なお、当審における控訴本人に右旅行には控訴人及び従業員五名の大人六名と幼児が同行した旨供述し、鷲羽グランドホテルの御会計書(甲第七三号証)には六名という記載があるが、その明細書である2食付宿泊伝票(甲第七四号証の一)には大人七名としてその計算がなされていることが認められ、右旅行には控訴人及び従業員五名以外に大人一人が同行したことが明らかである。

次に、前記甲第七八号証、当審における控訴本人の尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると、昭和四七年中に二回従業員の慰労会として四万円を要したこと、従業員の傷病に備えて四〇〇〇円の薬を購入したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

なお、控訴人は従業員に対し間食を支給していた旨主張するが、これを裏付ける証拠はなく、この点に関する当審における控訴本人の尋問の結果は容易に信用することができない。

そうすると、福利厚生費は一四万二三二七円となる。

以上のとおりであるから、昭和四七年分の控訴人の収入は六七九万〇〇五二円、売上原価は五三万六一五一円、経費(合計)五三九万〇三五四円、事業所得金額八六万三五四七円となる。

3 昭和四六年分について

控訴人の所得に関する別表1昭和四六年分についての収入金額、売上原価、経費(合計)、差引事業所得金額のうち収入金額、売上原価は当事者間に争いがなく、また経費(内訳)のうち接待交際費、消耗品費を除き当事者間に争いがない。

(一)  接待交際費

原審及び当審における控訴本人の尋問の結果に、前記認定の昭和四七年分の接待際費の額及び被控訴人の認容する昭和四八年分の接待交際費の額を対比して検討すると、被控訴人は昭和四六年当時得意先に対する接待費、中元、歳暮等に必要な費用として一か月平均一万円、年間一二万円を要したことが認められるので、接待交際費を一二万円とするのが相当である。

(二)  消耗品費

前記乙第五六号証によると、控訴人は塚谷から昭和四六年中に五一万〇七八〇円の物品を物品を仕入れたのであるが、このうち消耗品に当る分は機械器具である糸鋸機、曲機、コ型機、角切機、木型機械一式(値引)についての二八万一七〇〇円を控訴した二二万九〇八〇円分であることが認められる。

ところで、控訴人の事業が塚谷からの仕入物品以外にも多数の消耗品を必要とすることは、前記三1(三)で認定したとおりであるが本件においては昭和四六年分の消耗品費について塚谷から仕入れた消耗品の額以外にはこれを確知する資料がないので、右塚谷からの仕入分も含め控訴人の昭和四六年分の消耗品費全部について、昭和四八年分及び昭和四七年分の消耗品費の収入金額に対する各割合の平均値をもつて推計すると、その額は四六万九三八四円となる。

(算式)

収入金額 消耗品費 消耗品費/収入金額

昭和48年分 10,845,442円 925,776円 (小数5位以下4捨5入)

0.0586

昭和47年分 6,790,052円 397,601円 ( 〃 )

(0.0854+0.0586)÷2=0.072

6,519,224円(昭和46年分の収入金額)×0.072=469,384円

よつて、消耗品費の額を四六万九三八四円と認定する。

なお、被控訴人は控訴人が売上原価と消耗品費の経類区分を判然としていないので、消耗品費については被控訴人が認容した売上原価及び消耗品の合算額をもつて控訴人が支出した消耗品費と対比すべきである旨主張するが、この点についての判断は前記三2(二)に示したとおりである。

そうすると、昭和四六年分の控訴人の収入は六五一万九二二四円、売上原価は四五万九三六〇円、経費(合計)四七七万〇九五五円、事業所得金額一二八万八九〇九円となる。

四  以上の認定によれば、控訴人の昭和四六年分の総所得金額は一二八万八九〇九円、昭和四七年分総所得金額は八六万三五四七円、昭和四八年分総所得金額は一五七万四七〇一円であつて、いずれも控訴人主張額を超え、本件各更正処分の額(昭和四六年分及び昭和四八年分についてはいずれも審査請求裁決によつて、昭和四七年分については異議決定によつてそれぞれ減額された額)を下回ることが明らかであるから、控訴人の請求中、本件各更正処分のうち本件各係争年分の右認定の各総所得金額をそれぞれ超える部分及びこれらに対応する加算税の各賦課処分の取消を求める部分は理由があるので認容し、その余の部分は理由がないので棄却すべきである。

五  よつて、右判断と趣旨を異にする原判決は相当ではなく、本件控訴は一部理由があるから、民訴法三八六条により原判決を主文第二項のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき同法九六条、九二条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判所裁判官 仲西二郎 裁判官 長谷喜仁 裁判官 下村浩蔵)

別表1 所得計算書

〈省略〉

別表2

昭和48年分収入金額の内訳

〈省略〉

〈省略〉

別表3

〈省略〉

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